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Channel: 徒然なるままに・・・気ままな雑記帳
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幼い姉妹 17

私は、歩を早め改札口を出た。 そのまま新幹線切符売場ではなく、姫路駅北側の駅前広場を目指した。 姫路といえば、姫路城である。今日は城を見るためにここまで来たわけではないが、 ひと目だけあの天守閣をこの眼で確かめてから帰りたい。 この日の姫路駅は工事中であった。仮通路や囲いがあって歩きにくい。以前来た時 のように、すっと駅前広場に出ることができない。...

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幼い姉妹 18

 新幹線の長いホームに、人影はまばらである。 こだま号は六両編成でホームの中央部にのみ停まる、という案内放送に誘導され その位置まで進む。  そのとき、小さな掲示物が私の眼に留った。  「ここから姫路城が見えます」  すこし驚いて、ホームから北の方向に視線を移す。 透明の風除けの塀越しにビルの間の空間に挟まれながらも、天守閣が日の光を受け、 白く輝いている。  私は、その場で数秒の間、眼を閉じた。...

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幼い姉妹 19

こだま号がゆっくりと動き出す。 車内は貸切同然の状態である。 日の当たる南側の窓側の座席に座り、弁当に箸をつける。 先ほどの姉妹は、今どうしているのかな、と思う。 英賀保で出迎えの人と合流し、目的地に着いてほっとしている頃であろうか。 こだま号とはいえ、新幹線はやはり速い。十分ほど走ると日没が近い日の光を浴びた 明石海峡大橋の橋脚が次第に大きくなってくる。...

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幼い姉妹 20    

 新大阪駅から我が家まで、それほどの時間はかからない。  帰宅すると、ちょうど夕食前の時間であった。 夫や父親が休みの日に行き先も告げず、日帰りでぶらっとひとりで出かけても 細かく詮索する人は、この家にはいない。  私は、家族といつものように夕食をとりながら、またあの幼い姉妹のことを思った。 今頃彼女達も夕食をとっている頃であろうか、と。

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幼い姉妹 最終章

 あの日から、約一年が経過した。  週明け後、仕事の日々に戻るにつれ、いつしか彼女達のことも記憶の底にしまわれた ままとなっていた。くしくも、このブログに投稿する素材を見出せなくなってしまっていた 自分にこうして今、再び力を与えてくれているのも、誰かのおかげなのかも知れない。  思い返せば私は、幼少の頃から旅行は好きで、これまで日本国内を中心にあちらこちら...

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西宮市山口町 1

 西宮市山口町。 中国自動車道・西宮北インターチェンジ付近、と表現した方が分かりやすいかも知れない。 東を除く三方を神戸市北区に囲まれた西宮市の北西端に位置し、丘陵と小河川に浸食された 谷とで構成された地域である。 同じ西宮市でも、この地の風景と、西宮七園と呼ばれる高級住宅街や阪神甲子園球場など 西宮を代表する地域のそれとは大きく異なる。...

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西宮市山口町 2

 彼は、この流通団地内に取引先がある関係で、しばしばこの地まで出張してくる。  流通団地関係者の移動手段は専ら自動車であり、彼のように電車とバスを乗り継いでやっ てくる人は少数派である。彼が用務を終え帰途につくのは、大体夕方の5時前後であるが、 帰りのバスを待つ際、同じバス停で他の人と一緒になったことがない。  暮れも押し迫ったある日、出張先での用務を終え、彼はいつものバス停で帰りのバスを...

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西宮市山口町 3

 ほどなく、部下の方のおじさんが、彼に話しかけてきた。 「新神戸駅に行きたいのですが、どのバスに乗ればよいのでしょうか」  関西では聞き慣れないイントネーションである。 「それなら西宮名塩行きではなく、岡場行きに乗らないと遠回りになりますよ。  私も次の岡場行きに乗りますからご一緒しましょう」と彼は答えた。 その後、彼は数分間の会話で、ふたりがこの近辺の会社に呼び出され、はるばる広島から...

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西宮市山口町 4

 17時10分、時刻表通りに岡場駅行きバスがやって来た。 「このバスです」 彼がふたりに声をかける。 「次の停留所が岡場駅です」と、彼が続けた言葉にふたりが少し驚く。 ふたりは、ここから岡場駅までもう少し先だと思い込んでいたようだ。 動き出したバスの車内後方より、「運賃は150円か。おい、百円玉持ってるか?」といった 声が彼の耳に入ってくる。...

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西宮市山口町 最終章

 この線は単線である。岡場駅で双方向の電車が行き違いを行う。 彼は、三田方面行きホームから、線路をはさんで反対側にある新開地方面行きホームに立つ 人たちの中に先ほどのおじさんたちの姿があるか確認しようとしたが、その前に電車が到着 してしまった。少し不安を感じたが、大人ふたりだしまあ大丈夫だろう、と思いながら電車 に乗り込んだ。  帰宅後、彼は妻が今日の出来事について話すのを先に聞いた。...

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